(日本という国を地球上から抹消しようという勢力が存在しているんじゃなかろうか)2月18日、「アスティとくしま」にて行われた京都大学・原子炉実験所助教、小出裕章さんの講演を聞いて、私はそう思った。
 原発問題に関して著作物も多く、マスコミからもたびたび取材を受けている著名人が講師であるとは言え、今回の原発事故現場である福島県からはかなり離れた、直接的な影響の薄い徳島市での講演会に会場いっぱいの聴衆が集い、冒頭、小出さんご本人も驚きの気持ちを述べられていた。徳島の人間であっても子供を持つ親や、食品の安全性に気を使う人にとっては関心の高い問題であろう。
 しかし、小出さんはお話が進む中で集まった我々に対してこう断言した。「この会場には小さな子供さんもいますが、子どもたちを除いて、今ここにいる大半の人には日本に原発を54基もつくってしまったことに対する責任がある」と。
 数年前、実家がある海部郡海陽町の隣町、高知県東洋町が高レベル放射性廃棄物の最終処分事業の文献調査に応募した。当時私は「よりによって隣町に来なくても」と思いつつ、「ガラス固化体」ってどういうものなのか、廃棄物の搬入は海路を使うのか陸路はどういったコースをとるのかとか、土中に直に埋めるわけはないだろうから何らかの構造物を地下に建設するのであろう、どんな素材を使ってどのような工法で造るのか知らないが、100万年先まで持つ建築物が本当に造れるのだろうか、などと多少ではあるが自分なりに調べたり気を揉んだりしたのを覚えている。しかし応募したのが隣町でなく、例えば東北のどこかの聞いたことも無い名の町であったとすれば、率直に言ってまったく関心を持たなかっただろうと思う。小出さんは当時、東洋町へ赴いて「そんなことはやめなさい」と住民を説得されたそうだ。        
 日本人の大半は、日々忙しく暮らす中で放射性廃棄物の処分候補地として手を挙げた聞いたことも無い小さな自治体のことなど気にせずにいて、今回の福島第一の事故があるまで日本に54基もの原発があることすら知らなかったのではなかろうか。実際私はその一人である。
 自分たちの知らないどこかで誰かが何とかしながら生み出した商品やサービスに囲まれ、私たちは今の暮らしを享受している。
 お笑い芸人・なかやまきんに君のギャグで「健康のためなら死んでもいい」というのがあった。本末転倒のような近視眼的発想を揶揄する笑いであろう。原発は事故なく安全に稼働したとしても常に「死の灰」を生成する発電所なのだという。今のように「(電力をふんだんに使える)快適な暮らしのためなら死んでもいい」という価値基準に世間一般が移行しているのであれば最早前出のギャグは笑えない。
 
 

 先ごろ原発の耐用年数を40年、例外的に20年延長して60年とするというニュースがあったが、日本政府は福島第一原発事故を抱えながらなお、老朽化の進む他の原発をできるだけ長く使いたいようだ。
 小出さんの講演後に質疑応答の時間が設けられていたが、数百人の聴衆の中には質問者も多く、私は挙手し続けるも結局司会者から指されることはなくて残念ながら時間切れ。原発から生まれる放射性廃棄物を人体に対して害がないよう処理するという研究がどれだけ進んでいるのかお聞きしたかった。
 後で調べてみると、ネット上の動画で小出さんは「生み出した放射性廃棄物を無毒化する力は人間にはありません」と仰っていた。まさか! 本当ですか、先生。
 放射性物質といっても人体に対する毒性の強弱、毒性が無くなるまでの期間などに違いのある何種類もの物質があるそうであるから、個々に処理の方法は異なるのではと素人ながら考える。また燃料プールに保管されている状態の物質と外界に放出されてしまっている状態の物質ではそれぞれ対処の仕方が変わるのではなかろうかと想像する。
 世界に冠たる日本政府が、福島や周辺地域の人々を住み慣れた土地から退避させ、住居を放棄させ、仕事をも奪い、家族を離散させておきながら、尚且つ古びてゆく既存の原発を稼働させ続けると言うからにはその設備にしても管理体制にしても生成される廃棄物の処理方法にしてもちゃんと目途がつき、確かな自信があるからに違いない。日本ほどの国家が「そのうち学者が放射能の安全な処理方法を開発するだろうから」といった、一か八かのギャンブルみたいないい加減さで事を進める筈がない。相当の勝算があってのことに違いない。

 ネット上で見た情報によると猫はうんちの後、それを土に埋める習性があるらしい。行動の理由としてニオイを消すことによって自分の気配を隠し、外敵から身を守るためという説があるのだそうだ。
 自分にとって不都合な物は穴を掘って土の中に埋める、などという猫並みの知恵しか人間は持ち合わせていないなんてことがあろうか? 
 高レベル放射性廃棄物は「地中に埋めてその後100万年先まで管理します」なんて冗談はもういいので、拡散している放射能の処理も含め、すべての廃棄物の無毒化の方法とその実施予定を明示してもらいたい。まさか「土の中に埋めて隠す」がマジで唯一の方法ではあるまいな。ネットで検索しても素人であるせいか私には確たる情報を掴みきれないのだ。誰か教えて呉れないか。
 

 放射能の影響の受けやすさ、被曝する度合というのは50歳以上の人間と0歳児では大変な違いがあり、成長期にある幼児は年寄りに比べ数百倍も敏感なのだそうだ。
 国内の老いさき短い年長者にはちょっと「洟を引っ掛ける」程度で放置し、妊婦や次世代を担うべき小児、無防備な赤ん坊だけを選んで照準を合わせるという殺し屋がもしいるとすれば、彼は確実に、そして効率的にその種族を根絶やしにすることを企図している。
 日本という国を地球上から抹消しようという勢力がどこかに存在しているのだろうか、それとも「世界で唯一の被爆国であったにも関わらず原発の放射能で自滅」し、他の国の人々に対する反面教師として人類が生存するための教訓を与えるために、かつて日本人が好んだ自己犠牲の精神を発揮して壮大な滅亡劇を演じようとしているのか。
 ただでさえ少子高齢の国であるのに次世代の貴重な担い手を保護しようとしないどころか、むしろ排斥する方向をとっているかに見える環境、社会情勢を鑑みるとき、日本という国は地球上での存在意義を全うして民族としての寿命を終えようとしているのではないだろうかとすら思える。

 常日頃楽天的な私であるが、いささかブルーになった講演であった。(2012.2.19)

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