拉致被害者家族会 前副代表、蓮池透さんの講演会(徳島県三好市教育委員会等が主催、演題「二つの国のはざまで翻弄され続ける家族」)が61日に開催されることをたまたま知り、急遽であるが聞きに行った。講演冒頭で蓮池さんは東日本大震災と原発事故の発生により、拉致問題の話題がいささか霞んだような現状の中、人権教育として拉致問題を取り上げ、本講演会が開催されたことに謝意を述べられた。そのあと続けて、自身が二年前まで、東京電力に勤務していて、福島第1原発に於いても技術者として現場で作業していたことを自ら明かし、関係者として心を痛めている旨語られた。あとで調べてみると、ネット上では既にこのことは情報として流布しており、知っている人は知っていたのであろうが、私はこの時ご本人の口からお聞きして初めて知った。よくよく大問題に関わる星のもとに生まれた人である。

氏の外見については、以前テレビで見ていた頃はやたら背が高い人のように映っていたが、実物はそうでもなく、170台後半から180センチくらいに見えた。それよりも、かつてよくテレビに出られていた頃は強面(こわもて)で常に不機嫌そうに見えたものだが、今回、拝見してみると以前と違い穏やかで、柔和な表情になっているなあという印象を受けた。

私はこれまで、拉致問題について特に詳しく勉強したわけでなく、拉致問題関係者の講演等、直接お話を聞くのもまったく初めてで、これまでテレビのニュース等を時どき目にし、耳にして得た程度の誰でも知っているごく表面的な知識しかない。ただ、今回蓮池さんのお話しを聞き、拉致問題の解決は相当困難であるなという認識を得た。(講演内容を録音したわけではないので、以下は私の記憶と解釈に基づく記載であり、細かい語彙や表現方法について正確さを保証するものではないことをお断りしたうえで書きすすめます)

 現在、拉致問題は日本側の「早く返せ」、北朝鮮側の「やるべきことはやった」という主張で双方、平行線のまま膠着状態にあるらしい。日本政府は日朝間にある「核・拉致・ミサイル」問題について包括的解決を目指す方針なのだそうだ。しかし、「核・ミサイル」問題と「拉致」問題は性格が違うと蓮池さんは指摘した。前者は北朝鮮と世界各国の問題であるが「(日本人に対する)拉致」は北朝鮮と日本だけの問題である。だから拉致問題については個別に対策を立てるべきだと蓮池さんはおっしゃった。素人の私にその発言の意図を詳細に解説する能力はない。しかし「核・ミサイル」と「拉致」、両者の性格の違いは直観的にわかる。誤解を恐れずその直観を言葉にすれば、「核・ミサイル」問題は将来に向かっての懸念であるのに対し、「拉致」は日々どんどん過去へ遠ざかりつつある事実、ということだ。今現在この時も北朝鮮による新たな拉致が行われているのかどうか、私には知る由もないが、これまで現実に起こった個々の拉致事件は当事者には現在進行形であるにも関わらず、悲しいことではあるが、他の者にはとっては刻一刻と意識から遠ざかる出来事でしかない。批判を恐れず敢えて言い募れば、拉致被害者が仮に帰ってこなかったとしても我われ第三者の生活に直接的で重大な影響があるとは思えない、という思考が成り立つのを率直に言って否定できない。つまり「拉致」問題は他の二者と違って、絶えず誰かが積極的に注意を喚起し続けなければ意識の上から「消滅」してしまう危険性のある問題なのだ。直接自分に降りかかる、或いはその可能性が高い危難であれば人は敏感に反応できる。しかし自分や家族の身に絶対に起こらないとは言えないが、さほど現実味を帯びてはいない、また、独自に解決のための答を導き出せない問題を絶えず意識の上位に保持しておくのは非常に難しい。

「どこ行ったんだろうね」「早く帰ってくればいいのにね」

そんな結論の出ない堂々巡りの会話が繰り返されるだけの日々が続いていた当時、当事者である蓮池家の中ですら、決して忘れたわけではないんだけれど、(行方不明になっていた)薫さんの話題が一時期タブーとなっていたことがあったそうだ。増してや日々の生活に追われる拉致に無関係な家庭でこの問題が語られなくなってしまうことは想像に難くない。

青色のバッジを付けるだけで満足している政治家はいても拉致問題解決に向けて実行力のある政治家はいないのが現状であり、マスコミの報道も不十分であることを蓮池さんは不満げにおっしゃった。そしてそれらの言葉の裏に一体となって存在する蓮池さんの本音を私は推し量らないわけにはいかなかった。「国民の皆さんどうか無関心でいないでください」

言いたいのはこの一点に尽きるのであろうと。政治家を動かせるのは国民だけである筈だし、マスコミが飛びつき、取り上げるネタも国民の興味と無縁であるわけがない。

自分への直接の利益とは関係なく、社会全体の進歩、発展そして安全を希求する国民性。拉致問題は我われ日本人に対し、今より数段上の社会性を要求しているのだなあ、とそんな思いを抱かせる講演会であった。  (2011.6.2

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