本日(75日)辞任した復興担当相と宮城県知事が先日宮城県庁で会談していた。「長幼の序」はその様子を切り取った映像の中で復興相が知事に対して使った言葉だ。調べてみると、長幼の序とは

「年長者と年少者の間にある一定の秩序。長じたものは幼い者を慈しみ、幼い者は長じたものを尊敬するというあり方」

なのだそうだ。そうか、なるほど。素晴らしい教えであり、望ましいあり方だ。

私が見たものはテレビ放送用の映像なので編集も施されており、会談のごく一部しか見られなかった。従って前後の脈絡など知ることはできないが、どうやら会談に臨むにあたって年下の知事が年長者の大臣を待たせてしまい、そのことを年長者として若い知事に教え、諭した際の発言のようだ。しかしその直後に続けて大臣曰く「今の最後の言葉はオフレコです。書いたらもうその社は終わりだから」と。 何故?

言葉遣いは確かに乱暴な感じのする人であるが、大臣にとって分の悪い情報ばかり(私が見た限り)なので、敢えて大臣寄りに考えてみた。「オフレコです」発言の直前に大臣が言った、編集がされていないワンカット内の彼の言葉は概ね以下のようなものだ。

①「お客さんが来る時は自分が入ってからお客さんを呼べ」

②「長幼の序が分かってる自衛隊ならそんなことやるぞ」

③「しっかりやれよ」

オフレコにすべき「最後の言葉」はどれを指していて、何故オフレコにすべきなのか。

①の言葉が世間に出ると知事はお客さんを待たせながら謝罪もしないでヘラヘラしている失礼な人間だと思われかねない。知事が可哀想なのでオフレコにしてあげて。

②だとすれば、知事が年長者を敬わない無礼者だと勘違いされかねない。知事が可哀想なのでオフレコにしてあげて。

③だと、大臣と知事、主従関係にあるわけではないのにまるで子分のように扱われているように映る。県民の手前、知事が可哀想なのでオフレコにしてあげて。

といったところか。

「書いたらその社は終わりだから」発言の真意について、大臣の気持ちを慮り、それを代弁するならば「嗚呼、可哀想な知事。マスコミが彼を貶めるような記事を書こうとしても、大臣であるこの俺が必ず阻止してみせる」といった男気ある大臣の年少者を慈しむ心から発せられた・・・って無理だ。もう無理、これ以上庇いきれん。

「年長者を敬え、尊べ」と自ら言う年長者が、それを聞かされた若年者から尊敬されることは無い。これはもう100%無いと言っていい。私のこれまでの対人関係においては自分の方が年少者の立場に立つことが比較的多かったから、個人的な感想が影響しているのかも知れない(とは言え「俺を尊敬しろ」と年長者から冗談でなく本気で言われた経験は無いのだが)。しかし、今後仮りに50代、60代と生き続けるならば、立場の変化と共に認識も変わり、ちょっと冷遇され、軽んじられると耐えきれずに「年長者を敬え」と言ってしまう情けない年長者に私もなってしまうのだろうか。

「長幼の序」という言葉が出たのを機に改めて思うのは、現在この世に存在する自分より年少の者のことを考えるだけで充分なのかということである。今、日本でその是非について大問題となっている「原発」。

地方公共団体の首長の中には停止している原発の再開に同意する者もでてきた。「運転再開に向けて安全は確保」され、住民の理解も得られたことがその理由らしい。そこでの「安全は確保」とはどういう意味なのだろう。

4年程前、実家のある海陽町の隣町、高知県東洋町が、高レベル放射性廃棄物の最終処分場候補地として手を上げた。原発の使用済み燃料を再処理する過程で発生する高レベル放射性廃棄物。当時の町長は財政難を打開するため、調査を受け入れるだけで得られる莫大な補助金が目当てであった。地層処分のための調査を受けるだけで補助金がおりるなどというのはいかに原発事業が儲かるか、と同時にどれだけ廃棄物の処分に困っているかが素人にも察せられる。東洋町の場合は、出直し町長選による処分場反対派候補者の当選で応募は撤回されることになる。

高レベル放射性廃棄物は地層処分によっても人体に影響がなくなるレベルになるまで10万年とも100万年とも言われる期間、地表から数百メートルの地中で保管し続けなければならない代物らしい。その間の安全性は一体誰が、どの機関が保障するのか。地層処分の解説として現在の記述(経産省・放射性廃棄物等対策室HP http://www.enecho.meti.go.jp/rw/hlw/hlw03.html)でも「放射性物質をガラスの中に閉じ込めて地下水に溶け出しにくくします」とある。完全に「溶け出さなくします」ではないのだ。

前述した原発の再開に関する「安全は確保された」の意味であるが、その原発の使用済み燃料については放射性廃棄物を安全に処理する方法が確立されたのか? それとも放射性廃棄物そのものが発生しないタイプの原発なのかな? 「確保された安全」の具体的内容については寡聞にして知らない。

年長者が年下の者から敬われ、慕われるためにはそれ相応の人間である必要があろう。10万年、100万年先の日本人が我われの「年少者」に含まれるとすれば我われは彼らにとって尊敬に値する年長者となり得るだろうか。「尊敬」だなんてとんでもない、ただ「不都合を押し付けてくるだけの身勝手で無責任な厄介者」と思われはしまいか。私も年をとったせいか、100万年後の年少者の、我われに対する評価を思うとすごく不安である。 2011.7.5

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